当初の予定では今より2日前にラスベカスに到着し、一旦バイクを返却し、少しラスベガスの街中で楽しんで、再度出発、という計画だった。
しかし、シカゴからの走行の見通しが少し甘く、結局2日遅れでベガスに着いた。
その結果、バイクを返却し、その翌日にまた別のバイクを借りるという、だったらわざわざ返却しなくてもいいじゃないか、という状態になってしまった。
これ以上予定を後ろにはズラせないので仕方ない。ベガスの滞在は1日だけにした。
Eagle Riderで新しいバイクを借り直した。再び色違いの「Indian Chef Vintage」に乗り換える。
今度の車両はシルバー×ブラックのツートンカラーに、前回と同じく、まるで馬の鞍のような革製の茶色のシートとサドルバックが付いている。
なぜか前車両より足つきが良い。クラッチやサイドバーは軽い。エンジンの振動が抑えられていて回り方もスムーズだ。
同じ車種であっても結構な違いを感じた。年式は同じくらいだと思うのだけれど。
ベガス滞在が短くなってしまったので、せめて中心地を走ってからロスに向かおう。
ラスベガスのメイン通りをノロノロ走る。信号待ちなど繰り返しながらゆっくり走る。天気予報では今日の最高気温は39度。もう9月に入っているというのに。さすが砂漠の中に無理やり作ったような街だ。
その強烈な太陽の熱と、1800ccを超える裸のエンジン熱に挟まれ頭痛発生。郊外に抜けても頭痛が治らない。20km程走った後、たまらず、ハイウェイを降り、ガソリンスタンドで休む。
水とドライフルーツを取り、静かにしていたら、頭痛がおさまってきた。
再び走り始めるものの、標高が下がるにつれてどんどん暑くなる。バイクに付いている温度計は45度を指している。
ハイウェイを時速130kmくらいで走っているのに、まるで停車している時と変わらないような暑さ。何これ。ここまでの暑さは初めてで、このまま走るのはちょっと無理。サービスエリアに逃げ込む。
フローズンヨーグルトを食べたら少し落ち着いてきた。
気を取り直し、先に進み直す。
目的地は「バクダッドカフェ」。
映画「バクダッドカフェ」で有名な、あのさびれたカフェ。
ナビ通りに進むと「バクダッドカフェ」は本当にあった。お店が営業しているのかよくわからず、中を覗き込むと、細身でキャップを被った70歳くらいの女性が真顔で、店の中へ入るように手招きしている。
中へ入ると、映画と同じように気だるい雰囲気が漂っている。映画の内容はもうほとんど覚えていないけれど、こんなアンニュイな感じだった。数名の高齢なスタッフの人たちも、演出なのか、素なのかは知らないが、皆気だるい雰囲気をまとっている。…たぶん素だと思う。
そういう意味では期待を裏切らないお店だった。明るく元気良く「Hello!」というのはここでは合わない。メニューは簡単な飲み物だけだったような気がする。
そしてその後、今日一番の事件が発生。
日も落ちかけてきた頃、ガソリンスタンドで給油をしていたら、サドルバックが少し傾いている事に気がついた。
よく見るとサドルバックのジョイントがひとつ外れ、バックの一部がマフラーの上に落ち接触したままになっている。焦げ臭い。こ、これは…。
見たくはないが、バックの中を覗く。何かが焦げたり溶けたりしている。 恐る恐る確認するとサドルバックの底に穴が開き、その上に置いてあった車両の重量書類が焦げて読めない状態になっていた。奇跡的に、自分の持ち物の被害はハンカチ2枚と洗濯用ネットだけ。
なぜ外れたのかわからないが、外そうとした訳ではないので、たぶん自然に外れた。これは明日のバイク返却時にどう処理するかお店と相談するしかない。
バックを付け直し再び走り出す。
すっかり暗くなってしまった。
慎重に運転を続け、やっとロスの明かりが見え始めた。
さっきまで砂漠の中を走っていたのに、急に都会の道に変わる。その差が激しすぎる。
何とか無事に今日の宿に到着。フロントの人にすぐ隣にチャイニーズレストランがあると聞いたので行ってみた。すると、そこは韓国人経営のしゃぶしゃぶ屋だった。かなり繁盛していて、活気がある。
しゃぶしゃぶを注文してみたら期待以上に美味しい!スタッフは全員アジア人でテキパキ働いている。お客さんの大部分もアジア人。たぶん日本人は僕ひとり。皆しゃぶしゃぶを美味しそうに食べているのを見て何だか嬉しくなった。
今日は過酷な1日だったけれど、これでだいぶ蘇った。
気分的には蘇ったつもりだったが、やはり疲れていて部屋に戻るとすぐに寝てしまった。
もう、明日の事は明日考えよう、と思いながら。
今日の走行距離:
288mile(463km)
合計走行距離:
3,287mile(5,290km)