セント・マーチン島の13年間

ひと昔前、ある巡り合わせによってセント・マーチン島で生活を始めた。当初滞在予定は1年間くらいのつもりでいたものの、数えてみれば時すでに13年が経過。思いのほかフィットしてしまい現在にいたる。

13年と言えば、僕にとって実家を除くと断トツに一番長く住んだ場所だ。二位の東京(7年)を大きく引き離して。
たまに
「一体いつまでここで暮らし続けるのだろう?」
という疑問が頭に浮かんだ。しかし特に他に行きたい所もないし僕たちにはとても水が合っていた場所だったから今後もなるべく長く居続けたかった。もしかすると爺さんになるまでここに住むのか?なんて考えたりもした。

しかーし、近年は何となくチラチラと終わりが見えはじめた感覚があったのも事実で、まあ、たぶん子供(現在6歳)が高校生か大学生になるタイミングで僕たち夫婦も島を離れるのかもなぁ。という小さな島にありがちな子育て世代あるある問題の片鱗も一応現れ始めた。(セント・マーチン島にはフランスの大学がないので進学する子たちは普通フランス本土などへ渡って行くから)

例えそうだとしてもまだ当分の間は今の生活が続くだろうと思っていたのも束の間、やはり個人も社会も全ては移ろいゆくもので… 特に今どきの社会変化のスピードはマッハだし、またある日突然これまでの世界が終わってしまう事も結構ある。そうなれば思いきった変化が必要になる。
一方、急に何かが開けたり、新たな目的ができたり、少し視点を変えたら今まで見えなかったものが見えたり、そういうチャンスが訪れたりもする。

… そんなこんなで僕たち家族はいろいろと模索したあげく、この夏セント・マーチン島から新たな場所へ引っ越す事にした。これはこの2〜3年間毎日のように考え話し合った結果で、実はずいぶん前に結論は出ていた。しかしこの島にはこれだけ長く住んだのだから出発に対して後ろ髪ひかれる思いというのもやはりある。

それで肝心の新たな場所というのは、インド洋にぽつりと浮かぶフランス海外県のレユニオン島という所。
(インド洋上とは言ってもアフリカ大陸に近い。南半球)

そう、またもやフランス海外県であり、引き続き南の島。いったいどれだけフランス海外県・準県に縁がある人生なのか。
ただ島の規模はセント・マーチン島とは比較にならない程大きい。レユニオン島の面積は神奈川県と同じくらいで三千メートル越えの山も鎮座している。住人は90万人近く。という事はこちらカリブ諸島にあるフランス海外県・準県すべて(グアドループ、マルティニーク、セント・マーチンのフランス側、セント・バーツ)を合計したくらいの人口だ。そしてレユニオン島の右隣にはモーリシャス島(インド洋の貴婦人♡との異名をもつ)、左隣には日本の約1.6倍の面積を誇る巨大なマダガスカル(不思議の島)が並んでいる。
セント・マーチン島がもはや小さくなってしまった僕たち家族が次に向かう場所としては最適だと思った。

こちらの持ち物はほぼ大体手放して行く。だからまた1からのスタートになるけれど、そんな人生経験もすでに数回目だしきっと大丈夫さ(楽観的)。またあのロールプレイングゲーム(の実写版)をレベル1の最弱状態から始めるような経験ができるかと思うと楽しみだ!

引っ越しが落ち着いたら新天地の様子をいろいろとご紹介していきますのでご興味ある方はしばしお待ちを〜

セント・マーチン島 Grand-Case, Petite Plageの黄昏時

 

2024年4月2日