Sevilla(セビリア)

フラメンコの本場と言われているこのセビージャ。ここは同時にスペインを代表する都市でもある。例によって、まず車で街をウロウロする。コルドバでの教訓を忘れず、旧市街には入り込まないように気をつけながら。だいたい街の地理を把握するのに4時間くらいはかかる。この日は日曜日だった為、フランスと同じく店の多くは閉まっている。車を安全なところに確保する。歩いてサンタクルス街(旧市街)へ。一泊20ユーロの安宿を発見。シャワー、トイレは共同だけど、まあいいか。どうせ、今日もフラメンコを観終ると帰ってくるのは夜1時くらいだし、寝るだけだから。ということで、この宿に即決。今日のフラメンコはセビージャの老舗のタブラオ、「Los Gallos」。ここは団体客は受け付けないこじんまりとしたタブラオ。でも、テレビにも出演するような有名なスターも出演するところだという。そのせいか、値段も今までの中で一番高い。といってもワンドリンク込みで29ユーロだけどね。タブラオに直接行って今夜の予約をする。
さて、これからどうしようか…、店も閉まっているしなー。開いているのは飲食店だけ。表通りにある店はお客さんは結構入っているけど、なんかしっくりこない。結局裏通りにある表通りより値段の安い看板を掲げる店に入ることにした。外の席にお客さんは誰もいない。店の中を覗き込むとおばちゃん2人が話をしながら食事をしていた。オーラ、と挨拶する。ほらほら、好きな席にすわりなさい!と元気のいいおばちゃん。もう一人のおばちゃんも、そうだそうだ、という感じで頷いている。看板に出ていて気になっていた、ガスパッチョとパエリアとデザートで6ユーロというやつをオーダーする。うん、これはおいしいぃ!特にガスパッチョ。この暑い気候にはこのようなニンニクの効いた冷製野菜スープが必要なんだな。妙に納得する。
夜10時半、待望のタブラオへ。結論から先に言うと、今回観た中で最高レベルのフラメンコだった。いろいろなスタイルがあって飽きないし。カスタネットを使うスタイルやアバニコを(扇子)を優雅に煽るきれいな女性、タップダンサーも真っ青になるくらい、ものすごい速さでかつ正確なタップを踏む男性ダンサー、2時間声を張りっぱなしで歌い続けるハマコー似のすごいおやじ。腹はでてしまっているけど、そんなこと関係ない、かっこいいぞ。ギタリストもものすごい速さでマイナーコードを弾きまくり、絶対に音をはずさない。手拍子もマイクを通していないはずなのに、これでもか、という大きな音でタブラオ中に響き渡る。オーレ!オーレ!という叫び声。みんなすご過ぎる。相当な訓練をしているんだろうな。僕がフラメンコを好きな理由を考えてみた。
1:お客さんとダンサーやギタリストとの物理的な距離が近い。その為ライヴ感を充分に感じることができる。
2:基本的にアンプラグドであること。ほとんどマイクを通すことがない。つまり、ごまかしがきかない。実力がそのまま見えてしまう。だから実力が問われる。
3:即興性がある。
4:明るい曲調でないにもかかわらず、勇気がわいてくる。そして、決してしみじみしない。いさぎよい。
こんな感じかな。
毎晩フラメンコのクライマックスは夜中12時過ぎ。特に今日のフラメンコはすごかった。ダンサーのキツイ表情、正確で速いタップ、さっき飲んだアルコール、腹の奥のそのまた奥から絞り出すような叫びのような声、頭の中でそういうものが混じりあい押し寄せてくる、うわ〜、すげー、と思いながらフラフラになって宿に戻った。細かいことは考えたくなかった。でも、大事なものを得た気だけはした。